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生命保険の見直し
加入時に自分のニーズに合っていると判断して加入した生命保険で あっても、社会情勢や経済
情勢・家庭・環境などの変化によって見直しが必要になってきます。とくにシニア世代では若い
ころに加入した保険を継続している場合、ニーズに合わず、無駄や不足が生じている ことも考え
られます。現在加入の保険内容をよく確認して、必要で あれば見直しをかけて行きましょう。
保険の加入目的の確認
保険証券を手元に置いて、何のためにこの保険に入ったのかを確認してみましょう。
加入の目的としては
●家族を支える為の死亡保障
●家族の病気やけがに備える医療・介護保障
●夫婦の老後のための生活保障
●子供に残してあげる為の準備資金
など様々な理由が考えられます。その中で、今後その保障が必要か、 重複していないか、逆に
不足していないかを考えて行きます。 例えば、シニア世代であれば高額な死亡保障よりも、病
気にかかった 場合の医療保障を手厚くしておくなどの見直しが必要となります。
生命保険の内容のチェック
@ 契約日の確認
保険の予定利率、被保険者の加入時の年齢がわかります。
A 契約形態
受取人の確認をします。保険契約者・被保険者・保険金受取人がだれかによって受取時の税金
が変わってきます。
B 死亡保険金額
主契約・特約それぞれ保険金の病気死亡時の金額を確認します。三大疾病保険特約も加算しま
す。保険金が将来どう変わるのかもチェックします。
C 保険期間
保障がいつまで続くのか確認します。定期保険特約付終身保険の場合、終身保険の特約の保険
期間が保険料払込期間と同じ場合は全期型、短い場合は更新型です。更新時の保険料は再計算
されますが当初より必要保障額が減少した場合、保険金額を減額して更新することもできます。
また、医療特約の保険期間は80歳までとなっている場合が多くなっています。
D 保険料
保険料をいつまで払うのか確認します。ステップ払いでは、ステップ期間終了後に保険料が上
がります。終身保険に医療特約が付いている場合は、払込満了時に残りの期間の保険料を一括
で支払う形のものがほとんどですが、更新型の場合は、支払う金額が更新の都度大きく なるの
で注意が必要です。
E 入院特約
病気入院・ケガ入院・生活習慣病入院・がん入院のそれぞれの給付日額を確認してください。
家族型は夫が万が一の場合、妻子の保障がなくなるタイプが多いので、その場合の対応も準備
できているか確認してください。
万が一の場合の年間収支を確認
必要保障を知る第一歩は、万が一の時の年間収支を把握することです。現状収入を支える人が万
が一の事態になったとき、家計状況がどうなるのかを確認しましょう。
●遺族基礎年金について
遺族基礎年金は、国民年金に加入している夫が死亡した場合、子供のある妻、又は子供に支給さ
れます。子供とは、18歳になって最初の3月31日までの子、または20歳未満で1級又は2級の障
害のある未婚の子供をいいます。
遺族基礎年金の給付額
基礎年金額 | 子の加算額 | 計 | |
妻と子1人 | 792,100円 | 227,900円 | 1,020,000円 |
妻と子2人 | 455,800円 | 1,247,900円 | |
妻と子3人 | 531,700円 | 1,323,800円 |
●遺族厚生年金について
厚生年金加入者が亡くなった場合は、遺族厚生年金を受け取ることができます。対象者は、妻・
子(遺族基礎年金の要件と同じ)・55歳以上の夫・父母・祖父母。遺族厚生年金の支給額は、
給与の額、厚生年金被保険者期間によっても変わりますが現在は税込月収の約6〜7割となって
います。 *夫の死亡時に30歳未満で子がない妻には、5年間の有期給付となります。 さらに、
夫が死亡した時妻が40歳以上65歳未満、または妻が40歳時に高校卒業前の子がいる場合、妻
が40歳以上65歳に達するまで、 中高齢寡婦加算として594,200円加算支給されます
(遺族基礎年金が支給中は支給停止)。妻の生年月日が昭和31年4月1日以前の場合は、65歳に
なると経過的寡婦加算に変更になり、妻の老齢基礎年金とともに生涯支給されます。
遺族の必要保障額の確認
毎年の年間収支・貯蓄残高の推移を表した表を「キャッシュフロー表」と言います。万が一の
場合の年間収支を基に、「死亡後のキャッシュフロー表」を作成します。これにより、毎年の
生活収支がはっきりとしてきます。 例えば、妻が40歳の時夫が亡くなった場合、妻の平均
余命は47年です。死亡後のキャッシュフロー表を47年先まで作成し、収支の合計をします
(@)。また、夫死亡時に一時的に発生する費用(葬儀代など)、給付金(死亡退職金など)等
の収支を計算します(A) @とAを足したものが、不足する資金となります(B)。
このBから貯蓄、金融資産等すでに準備されている資金を引いた金額が必要保障額です。
ここで注意が必要なのは、この必要保障額は今現在のものであるということです。万が一の事態
が、来年、5年後、10年後・・・・の場合には計算の基礎となる各種の数字(遺族年金などの
支給額や、預貯金額など)も変化します。したがって、今後も定期的にその時点で必要な死亡保
障額(=必要保障額)を再計算して、保険を見直しいく必要があります。
医療保障の考え方
● 病気やケガで入院した場合の自己負担
@ 差額ベッド代(公的医療保険で決められた室料との差額、大部屋は自己負担なし)
差額ベッド代の相場は、1日5,000以下の所が6〜7割
A 健康保険対象外の特殊な治療費(高度先進医療費など)
高度先進医療費などは、患者の負担で200万円を超えるものもあります。
B 入院時の食事代(1食260円) *一般の被保険者の場合
C その他の雑費(家族の交通費・日用品・快気祝いなど)
● 高額療養費制度について
健康保険の被保険者やその被扶養者が、1ヶ月のうちに同じ病院で支払った医療費の額が一定額
を超えるとき、その超える額が現金給付される制度です。
自己負担限度額の基準(70歳未満)
一般所得者(標準報酬月額53万円未満) | 月額80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
上位所得者(標準報酬月額53万円以上) | 月額150,000円+(医療費-500,000円)×1% |
住民税非課税世帯 | 月額35,400円 |
自己負担限度額の基準(70歳以上)
外来(個人ごと) | 外来+入院(世帯単位) | |
一定以上所得者 | 44,400円 | 月額80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
一般 | 12,000円 | 44,400円 |
低所得者U(住民税非課税) | 8,000円 | 24,600円 |
低所得者T (住民税非課税・所得一定以下) |
15,000円 |
● 入院給付金の給付日額の目安
予備費としての貯蓄と合わせてバランス良く備えましょう。治療費が高額療養費制度で、1ヶ
月80,100円ならば、1日あたりは2,670円。 差額ベッド代が約5,000円とすると給付日額の
目安は
・会社員 給付日額7,000円〜10,000円
・自営業者 給付日額10,000円〜15,000円 (国民健康保険に傷病手当金がない為)
・専業主婦 給付日額5,000円〜7,000円 (子供が小さい時は少し多めに)
● 入院給付金の支払い限度日数について
医療保険にの支払い限度日数というものがあります。 通算保障限度日数とは、保険期間を通し
て支払いが行われる入院日数の上限のことです。一般的に730日、1000日、1095日が多いよう
です。
次に一入院あたりの支払い限度日数については、60日、120日、180日が一般的です。
厚生労働省のデータ(平成20年)によると、退院患者の平均入院日数は35.6日となっており、
短縮の傾向にあります。 また年代別に見ると、15〜34歳・・・13.0日、35〜64歳・・・29.5日、 65歳以上・・・47.7日となっており、年代が上がるにつれて長くなる傾向が見られ
ます。
病気別に見ると、脳血管疾患(脳梗塞など)で約100日、急性心筋梗塞・胃がん・糖尿病で
約34日というデータがあります(厚生労働省H17患者調査)。 これらを見て行くと、基本的
に支払い限度日数については60〜120日でカバーできるということになりますが、注意が必要
なのは「1入院」の意味です。この1入院とは、もし1入院支払限度日数以内で退院をして、退院
の翌日から180日以内に同じ病気で再度入院した場合は、 前回の入院と合わせて、継続した1回
の入院となります。例えば、ある病気で40日間入院をして退院をしたが、180日以内に同じ病気
で再度40日間入院した場合、支払限度日数が60日であったとすると、1回目の40日の入院分は
全てカバーされますが、2回目の入院については、40日のうち20日分(1回目と合わせて60日
分)しかカバーできません。ガンなど再発の可能性の高い病気に備えるのであれば、限度日数を
長めに見ておく、ガン保険への加入などを検討する必要があります。また女性疾病医療特約や3
大成人病特約などニーズに合わせて選択しましょう。
見直しのポイント
必要保障額と既加入の死亡保険金合計額の差額が見直し保険金額です。一般的に、必要保障額は
末子が誕生したあたりで最大となり、その後子供が成長して、独立していくにしたがって年々減
っていきます。住宅の購入も必要保障額が減少する要因となります。団体信用生命保険付きの住
宅ローンを利用すれば、万が一の場合にローン残債は保険金で完済され、遺族生活費のうち住居
費が減少するためです。必要保障額を満たしている場合は、定期的に見直しをしていく中で、保
険金額を下げていくのが合理的です。
見直しの方法について
● 保険金が多い場合は
定期保険特約・特定疾病特約の一部解約・減額・払い済み・解約などの方法があります。定期特
約だけを減額できない場合には、定期特約を解約し別の定期保険に加入する方法もあります。
● 保険金が不足する場合は
特約の中途付加・中途増額・新規に契約などの方法があります。定期保険特約付終身保険の終身
部分を増額することもできますが、定期部分に比べて、終身部分の増額は保険料がかなりアップ
しますので、家計のバランスを考えて増額しましょう。医療特約を中途付加・増額すると責任準
備金の差額を払うことになります。単体の医療保険に加入した方が安いケースもあります。
● 保険の種類を変えたい、同じ会社の保険をまとめたい
契約転換制度を利用します。基本転換は、終身保険の部分に転換価格を充当しますが、比例転換
や定特転換は定期特約の部分にも転換価格を充当するので、貯蓄性が低くなり、更新時に保険料
がかなり高くなります。
● 保険料の負担を軽くしたい場合
減額・払い済み・延長・解約・払込期間の変更などの方法があります。予定利率の高い貯蓄性の
ある保険は残し、定期保険は安いものに変える方法もあります。特に平成8年4月以前に加入した
保険は予定利率が高い場合が多いので、解約など慎重に行った方がいいでしょう。
● 税金の負担を軽くしたい場合
契約者(保険料負担者)以外の人が満期保険金を受け取ると贈与税がかかります。税率が高くな
るので、受取人を契約者(保険料負担者)に変更しておいた方がいいでしょう。
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行政書士 村上佳雅 |
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